はてな訪問うごメモ記帳 - 第11回 森見登美彦さまを訪問!「ブログと新刊のお話をたっぷり伺ってきたよ」編

先月最新刊『恋文の技術』が発売になった作家の森見登美彦さまに会いにいってきました! 著書の内容だけでなく、はてなダイアリーで綴っているブログの裏話もたっぷりと伺っています。
意外にも(!?)上手なイラストのうごメモも必見。
http://d.hatena.ne.jp/ugomemohatena/20090430/1241091282

だそうです。以下にインタビューがあります(*^_^*)
  ↓
http://ugomemo.hatena.ne.jp/special/guestbook_11

うごメモ」はパソコンでないとご覧になれないようなので、以下にインタビューをコピーしてみました。
携帯電話ユーザの方は、ぜひお近くのネットカフェ、職業訓練施設や市民向けITコーナー(日中は一般に開放されていることが多いと思います)、家電量販店やケーブルテレビ会社のインターネット体験コーナーなどなどでお試しくださいませ。

<ここからコピーぶん>

○作家、森見登美彦さんのブログ&新刊話を伺いました
すらりとして物腰柔らかな森見さん。その上頭脳明晰で指が細くてキレイだなんて! 作品のみならず人となり含めてファンになる方の気持ちが分かる……
みなさんこんにちわ! 大型連休が近づいておりますが、この訪問記帳も負けじとでっかい花火を打ち上げていきたいと思います。今回はなんと!京大大学院在籍中に『太陽の塔』で日本ファンタジーノベル大賞を受賞され、その後も『有頂天家族』、『夜は短し歩けよ乙女』など京都の街を舞台に、ファンタジーが織り交ざる物語や独特の文体で人気の作家、森見登美彦さんのご登場です。ご存知の方も多いかと思いますが、森見さんは『この門をくぐる者は一切の高望みを捨てよ』というブログをはてなダイアリーで書いていらっしゃいます。こちらのブログも大変注目されており、その注目されぶりを具体的にお伝えすると、はてなダイアリー全体でアクセス数が5本の指に入るくらい!! 小説のみならずブログまでとにかく書いたものが全て?人気になってしまうなんて、まるで金ムクの万年筆を握りながらこの世に生まれてきた人っているんだな……とそこはかとなく思ってしまいますね。今回はそんな森見さんにブログのお話や、先月発売になった最新刊『恋文の技術』について伺ってきました!

○ブログで自分を発信するということ
「ブログを始めたきっかけは、とある編集者のすすめですね。その編集者の方が書き下ろしの依頼でいらしてお話をしていたんですが……。あれは忘れもしない、京都芸術センターの中にある前田珈琲でした。『森見さん、定期的にご自分から情報を出していかないと、世の中から忘れられてしまいますよ!』と情け容赦のないことを言われまして(笑)。当時は『四畳半神話大系』を出したあとで、その先二年ぐらい本が出ない状況だったので、『そうかな?』と僕も焦りました。もちろん最初は抵抗がありました。自分が抱いていた作家というイメージが古風だったので、『作家というものは果たして気軽に自分の文章をブログに載せたりするのか?』と悩んだりして。それに作品ではない文章をウェブで、しかも無料で出していいものかと。でも書いてみたら、まあ別にいいかと思うようになった。『人に求められて書いているものではなく自分で勝手に書いているのだから、これは仕事ではない』と考えるようになりまして」

各種あるブログサービスの中で、はてなを選んでいただいたのは、どんなところが良かったのでしょうか? やはり京都つながりとか……。

「同じ日本ファンタジーノベル大賞を受賞された平山瑞穂さんがはてなダイアリーをされていたのと、この、デザインと言うか、佇まいのストイックな感じが気に入りました。機能的でシンプルというか。京都発のベンチャーだから……とかは意識していなかったです(笑)。そういうことはやっているうちに、あとから知ったという感じです。しかし僕ははてなの可能性を全く引き出していない! 日記を書いて、せいぜいアマゾンの書影を貼るくらいですからね。そんなに活用できていない気がします。本当はもっと写真とか上手いこと使いたいんですけどね。まあでもストイックな体裁が好きだし、そこに写真をあえて入れなくても、それはそれでいいかなと。とたんに生々しくなりますからね。リアルでなくていい、嘘くさくていいと思っているので」

有名人の方のブログといえば、普段わたしたちが各種メディアで見る姿とは別の、プライベートな部分を表に出している場合も多いのですが、森見さんのブログはご自身を三人称で表現したり、昔の新聞の告知のような客観的な文章だったり少し距離感を保っているように感じられます。

「ブログを始めるときに心配だったのは、素の自分を垂れ流してしまわないかということでした。なので、それをセーブする一番シンプルな解決法が『三人称』だったということですね。やってみればわかるのですが、三人称で自分を垂れ流すのは技術的にも結構難しい(笑)。『森見登美彦氏』の観察日記として俯瞰して書けば、多少腹が立つことがあっても、書き難さという装置が感情的になることを制御してくれるのではなかろうか、と。とはいえ、一回だけ、方針を踏み外して後悔したこともありますが」

「また、小説での文体や書き方はせずに、あくまでブログで読むための文章を意識しています。エッセーの呼吸とも違って……感覚的なんですけど、もっとシンプルで、肉付けををせず、要点だけをポンポンと書くような。そうするからこそ切り分けができるんでしょうね。そこを小説と同じ手法で描いてしまったら気分転換にもならないし、だんだん苦しくなってしまうでしょう。読むほうもしんどかろう、と。あと、実は伝えたいことなどまったくない、という事実の目くらましにもなっているんです(笑)。自分の意見を他者の意見を参照などして発信するというブログの意義はまったく無視していますから。あれは……僕のブログはなんなんですかね。伝えるべき情報も少ないし、本当になんなんでしょうね……まあ生きているよという連絡ですかね。ランプが点っているか、読者の方がときどき点検に来て、森見氏の生存確認をしてもらっているような感じです(笑)」

とおっしゃる森見さんですが、その注目度や影響力はやはり大きく、森見さんのダイアリーにトラックバックをして日記を書いたら、その経由でアクセスがたくさん増えて驚いたという方もいるようです。また先日サイン会のお知らせをブログで告知したところ、あっという間に予約券がなくなったとも……。

「先日、結婚の報告をアップしたら、トラックバックがたくさん来て、それは、『おお反応があるなあ』と実感したんですが、普段書いているときには反響的なものは特に感じずやっていますね。実際、本当に見られているんですかね? そういえば最初はそうでもなかったんですけど、途中からサイン会で『ブログを見ています』とおっしゃる方が増えてきた感じはありましたね」

○『恋文の技術は』漱石の書簡集に発想を得て

さて先月発売された最新刊『恋文の技術』は、京都を離れ能登で研究をせねばならなくなった主人公から、複数の知り合いや友人にあてた手紙で構成されているという小説です。最初は、そんな感じでストーリーとかちゃんと追えるかな?と心配していたのですが、読んでみたらそれを意識することなく、絡み合う人間関係をほぐしながら楽しく読んでいけました。森見さんならではの小ネタも程よく挿入されエンタテイメント性抜群でした!

夏目漱石の書簡集が面白いと思って読んでいて、その形を再現してみたいというのがきっかけですね。複数の相手へ書かれた手紙が時間軸に沿って掲載されているだけなんですが、それを読むと相手のことや状況、漱石自身のこともよく分かるのでこういう形式にすれば面白くなるだろうと思いました」

漱石の書簡集の場合、現実に起こった出来事がありきの手紙ですが、本作は当然ながらフィクションなので根幹となる出来事自体も創作である、という二重の構造が執筆の上でややこしい気がするのですが、書く前の設定や構想はどうされていたのか気になります。

「雑誌の連載だったので、もう最初は『遠くにいる主人公が京都に手紙を書く』という設定だけがあったんです。それでまずは主人公が京都の友人に手紙を書くという第一話を見切り発車で書いてみた。あとは行き当たりばったりで、その回その回が面白くなるように、毎回新鮮な気持ちで(笑)書いていました。連載が終わってから全体を見て整理して、今の形にしたという感じです」

○自身の体験が小説の下敷きになっている?
今回のお話では、だらだらぐだぐだな学生生活の先に見えるもの、主人公が社会に出る上での悩みも描かれています。だれしも経験のあるだろう漠然とした不安感ですが、森見さんご自身にもそんなご経験があったのでしょうか?

「それはありますよね。自分は社会に出てやっていけるのだろうかと悩み、世の中に対してアピールするべきところが何もないという状況。その部分に関しては、『太陽の塔』を書く前の大学4回生、5回生くらいの、人生をうろうろしていたときの感覚で書きました。とにかくもうあの頃の葛藤は繰り返したくないですなあ。本当に『詩人か高等遊民になりたい』と思いましたもん。ああ、やだやだ(とつぶやく)、京大だって、ダメなひとはダメですよ。僕は大学の途中まで本気で小説家になるつもりだったんです。三回生になり『やはりなれないかもしれない』と思ったときに行き詰ってしまったんですね。農学部にいるけれど研究者になりたいわけでもなかったし……。かといって僕にサラリーマンが勤まるような気がしなかったし……。ともかく大学院の試験に受かって、実際の行くまでの猶予期間に『これが最後のチャンスにちがいない』と思って作品を書いて応募したら受賞して。でもまだ一作目では、それで食べていける、人生をかけようとはまだ思えませんでした。打ち上げ花火みたいなものですしね。たまたま一回上手くいったという感じでしたから」

舞台である京都や学生生活の描写など、フィクションではありながらご自身の体験を下敷きにしている部分も多いかと思うのですが、このたびご結婚もされ、その辺に微妙に影響がでてきたりするのかな、とちょっと期待する部分もあるのですが。

「いやいや、『家庭は仕事に持ち込まない』がモットーですからね! 今まで書いてきたものは、フィクションなので登場人物と自分とは違うものではありますが、『太陽の塔』あたりは一番生々しいというか、自分に密着している作品だと言えるかもしれませんしね。あれはもう一回書けと言われても無理かな。ただ意識しないところでどういう風にプライベートのことが影響するのか、自分では分かりませんけれども。まあとにかく、結婚してしまうと、今までのような腐れ大学生ものが立場上書きにくくなるということはある(笑)。まあ、『恋文の技術』主人公の守田も、もしかして就職とか未来の自分に向けて船出するのかしら?という雰囲気で終わっているし、さんざん腐れ大学生ものを書いてきたので、ちょぴっと外に開けていくかもしれませんね」

○「うごメモ」って不思議な道具
さて、ニンテンドーDSiをお渡しし、「うごくメモ帳」になにか一筆残していただくことに! ぱらぱらマンガのようなものが描けるツールなんですよ、とご説明すると、「へえー なるほど〜 はあ〜」としきりに「これは不思議などうぐだなあ!」と繰り返す森見さん。未来的なような、そうじゃないような、と、森見さんの中では存在自体が「不思議な道具」だったようです。
「これはやり始めると没頭しちゃいますね。よしもっとシンプルなものにしよう」ということでうごメモをひとつ書いていただきました! モチーフになっている無人島に座っているおじさんの絵は昔から描いていたものだそうで、そちらに添えられたメッセージは、「色紙になにか一言、と言われるといつも書いている言葉です」とのこと。さすが作家の方は、考えさせられる一言などがさらっと出てくるなあ!と感銘を受けつつ「ここにはなにか教訓のようなものが……」と伺うと「とくにありません」とのことでした! そういったことも含めて色々考えさせられる不思議な味わいの森見さんのうごメモ、どうぞお楽しみください。

お名前 
森見登美彦

メッセージ
これは不思議などうぐですね〜

のあとに、以下のような動くメッセージ&イラストが!

「人事を尽さず
天命をまつ
待てば海路の
日和なし
(椰子の木のある無人島で釣りをしている手描きイラスト)
おしまい」


<ここまでコピーぶん>
http://d.hatena.ne.jp/Tomio/