『真綿荘の住人たち』(文藝春秋)

思っていたよりは良かったです。
正直に言って、島本理生さんは気になる作家さんだけれども、『波打ち際の蛍』で蛍のような(断ってもすぐに触ってくるような、いやな)男性をよい男性のように描いていたのと、彼を「いい意味でも悪い意味でも、普通の男の人にしようと思いました。」とインタビューで語っていたのを読んで、「ああもうこの作家さんは読まなくてもいいかもしれない」と思っていました(http://www.quilala.jp/から、http://www.quilala.jp/from_bs/pu_interview.htmlの第2回インタビュー)。
ですが、今回はいつもどおりに年の離れた、しかもまたアレな男性が出てくるものの、まあまあ読めました。また、理解もしやすかったと思います。「元同僚のOさんとかなら、共感するかもな〜」と思いながら読みました。彼女は母子家庭で育った方で、恋人から結婚を申し込まれたけれどもしたくないと別れたりしていました。たぶん、「相手がいつか去るかもしれない」のがとても不安で怖いのでしょうね。綿貫さんも母子家庭だし、そういうところが共通点でしょうか。だとすると、今回はいろいろあるけれども最後はおさまるところにおさまることが予想される終わり方でよかったのでしょうね。
登場人物の中では鯨ちゃんが良かったと思います。わたしはこういうタイプではなくてがさつなほうなので、うらやましいです。