『精神科医は腹の底で何を考えているか』(幻冬舎新書)

なかなか面白かったです。
(※以下、人によってはちょっとショックであろうことについて書いています。これは届く方には非常に役に立つ内容だとは思いますが、ご注意下さい。)

なかでも、第5章の冒頭に出てくる「あえて異常と言い立てるほどではないものの、いまひとつ理解しがたい人たち」のところに考えさせられました。
こういう方々はけっこういらっしゃるもので、どうもわたしは彼らに好かれやすいらしいのでときどき彼らについて考えてみることがあります(というのは、彼らは人に嫌われやすいので、話し掛けやすそうだったり優しそうにみえるらしいわたしにちかづいてくるのです)。
わたしは、「彼らはちょっと虐待を受けた(受けている)のではないか?」ということを想像しています。見聞した範囲では、わたしがサークル全員に年賀状を出したらある日近づいてきて「お母さんが先輩の年賀状を読んで『下手な字』って言ってましたよ(笑)」などと言いながら、同時に「先輩とは同じアーティストが好きだし、相性がよさそうですよね」とも言ってニヤニヤしていた方などがいらっしゃいます。その後、わたしは彼が怖いのでサークルの部室にはあまりいかないようにしました。その、矛盾した内容を同時に発言すること、いきなり至近距離に近づいてきたことに驚きました。
もしかしたらよくあることなのかもしれませんが、この彼は親が子ども宛ての私信を勝手に見て批評を加えることについて疑問を抱いていないらしいのが怖かったです。そういうのは虐待の一種ではないかと思うのですが……。
あるいは、もしかしたらわたしにニヤニヤと寄ってきたのは、うすうす気づいていてそういう親から逃げたいというような希望の現れ、わたしに希望を見ていたことの現れだったのかもしれないと思うこともあります。
でも、わたしはいきなりパーソナルスペースを侵してくる彼が怖いのです。彼は数年前の同窓会の時点でもまた他人との距離感がつかめていないようで、交際しているわけでもない女性(彼のような男性とでも話してくれる優しい女性)の隣にいきなり近づいて行って座りこんだりしています。ちなみに、彼は長らく心理学の学生をしていたため*1、比較的彼を理解しようと努める教授や仲間に恵まれているのでなんとかやっていけているのだと思います。
この彼のほかにも、結婚情報サービス業などには「普通に勤めてはいるが、女性と交際できない、結婚相手が見つからない」という彼のような方がけっこういらっしゃいます。「では、わたしをお見合い相手(お見合いパーティーで知り合った女性、など)だと思ってお話してみましょう」というように練習したりすると、「結婚したい」というのに基本的なマナーができていないことがわかります。(注:例えば「さっさと上座に座ってしまう」とか「相手が禁煙席を希望したのに拒否して喫煙席につき、しかも食事前に&許可を取らずに喫煙しはじめる」とか「女性がおしゃれをしてヒールの高い靴をはいているのにさっさとひとりで歩いていってしまう、相手を思いやるということをしない」など。)
そのほかの方は、深刻に悩んで精神科医やカウンセラーのもとに通っているのではないでしょうか。そして、そこでもこの例のように「理解しがたい」行動をしているのではないでしょうか。こういう微妙さをわかる治療者はどの程度いらっしゃるのか、そこが気になります。
[追記]この記事がお役に立った方で、治療を受けたい、専門家にお話ししてみたい、という方は、地域の精神保健福祉センターや通学先の学校の保健センターなどに問い合わせてみるとよろしいかと思います。

*1:その後、博士号を取得して研究者として働いているはずです。