野村総一郎『「心の悩み」の精神医学』(PHP新書)

  • 「第7章 境目にいる人達」より引用。

ボーダーラインの中心病理は深い人間不信である。しかし単純な人間嫌いというのではない。温かくヒューマニズムに満ちた人間関係を希求し、それに裏切られてきたという思いがある。ボーダーラインの患者は必ずしも子供のときに悲惨な目に遭い続けてきたとはかぎらないが、いずれにしても人間に対する基本的信頼感が身につかなかったのである。そこで、世の中、人間一般に対して、屈折した恨みをもっていて、いろいろな人間に親切を求めて近づき、最初はその期待感が満たされるが、やがて相手の背負いきれないようなことを迫る形になって、相手がドサッと投げ捨てると、「何よ! 人間なんてそんなものなのね!!」とパニックになる、というパターンを繰り返すのだ。つまり、自分の人間観を確認するために漂っているとも言えよう。

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ボーダーラインの患者の人間不信は非常に屈折していて、「怨みつつ頼る」というものであることはつい先ほど述べた。このことを言い換えれば、「見捨てられ不安」が強い、ということになる。つまり、相手が怒らざるをえない態度をとるくせに、相手があきれて去ろうとすると、著しく不安になって、大混乱してくるのである。

  • とても興味深かったです。
  • ときどき、よくわからない方々がいらっしゃいますが、理解の手助けとなりました。
  • 読売新聞の「発言小町」で見た、「結婚した友人から連絡がこなくなりました」という投稿を書いた方がとても不思議だったのですが、こういう感じなのではないでしょうか。