「波打ち際の蛍」(『野性時代』2007年12月号、2008年1月号)

  • 酷評しているので、未読の方はご注意ください。連載途中ですが、あまりに気になったので感想を書いています。ファンの方には申し訳ありません……。
  • 短期集中連載の第一回と第二回です。
  • 恋人のDVから逃れてカウンセリングに通う主人公と、そこで知り合った蛍という男性とのラブストーリーのようです。
  • 近所のドラッグストアで買える、この程度の薬をこの程度の量飲んでしまったくらいでは、胃洗浄まではされないものではないでしょうか。
  • 蛍に二回目に誘われて、事情を説明してから二人で新宿御苑でフランスパンやワインを食するシーンがありますが、おかしいのでは? 「ちょっと高いワイン」だそうなのでオープナーも必要でしょうし、フランスパンはよく知らない人と手でちぎりあって食べるのには抵抗があります。また、友人のEさんによると、紙コップだとアルコールでのりが溶けるので飲めないそうです。
  • つきあっているわけではない男性と映画に行く、そこまではいいのですが、そこで手を握られるのはわたしだったら不愉快です。お互いに事情があってカウンセリングに通っているのでしょうに、ずいぶん配慮のない男性ですね。また、その時に「男の人に触られるのが怖いんです」と話してあるのに、その後ドライブに誘ったときに頭を撫でたり手を伸ばして来られたり、(そして、彼の指を握る主人公って)、なんなのでしょうか。さらに、蛍のマンション(?)に行って抱き寄せられたり(しかも、酔っ払って寝ているとはいえ、他にもうひとり女性がいるのに)。この二人とも、おかしいですよね?
  • こういう作品を読むと、「癒し」みたいなことだったら吉本ばなな「とかげ」とか(職業も同じマッサージ師ですし)を思い出しますし、「可愛げのあるダメ男さん」だったら川上弘美『ニシノユキヒコの恋と冒険』とかもありますし、どうしても比較して点が辛くなってしまいがちだと思います。
  • あと、12月号は島本理生特集ということで榎本正樹「関係性の測量〜島本理生論」というものが掲載されているのですが、その中の「思春期の消費と暴力の問題」で『ナラタージュ』について触れているのに、葉山先生の暴力が数え上げられていないことが気になります。生徒に学内でいきなりキスするのって犯罪だと思うのですが……。
  • とにかく、居心地が悪い作品だと思います。どういう方がこういう作品を読まれるのでしょうか……。
    • もしかしたら、DV被害者の方が被害を受けている(受けていた)ことに気づいたり、それで癒されたり救われたりすることはあるのかもしれませんが。